倫理の問題系

俺の頭を悩ませているのは常に、コレです。
「倫理的に生きる」とは果たしてどのような態度を指すのか。
かつての俺にとっての倫理とは、
恋愛を例に挙げれば
端的に言えば「好きな人に一途になる」ことだった。
けれど今は違う。
今の俺にとって、このことほど「反倫理的」な態度はない。
盲目的にただ一つの対象、一人の相手に没入するという態度は
思考停止以外の何物でもない。

こんなにどうしようもない世界でも、
ただ君にだけ認めてもらえたら僕は幸せ。
というのが所謂「セカイ系」作品に共通するテーマだとして、
俺の場合は「君にどう思われていようと僕は君が好き」だった。
よりタチが悪い。
これではもう「他者性」など存在のしようがない。
君にどう思われようと=つまり「君の意思は関係なく」
「僕は君が好き」なのだ。
それは他者を自らの内部に取り込み、
その他者性を無効化する態度であると言える。
エゲつない。

むしろ考えるべきは
他者の他者性とどう向き合っていくのか、
そこから倫理を立ち上げようとする姿勢こそが
倫理的な態度であるのではないか。
「一途に相手を思うこと」が「倫理的」であるためには、
相手も少なくとも自分に対して
同じような好意を見せてくれているという前提が必要となる。
そしてより肝要なことは、
その「二人の世界」が決して閉じた世界、
つまり排他的で閉鎖されたネットワークに帰結しないことだ。
相思相愛は素晴らしい。
けれど互いにとって互い(だけ)がすべて、
という関係性は、
今の俺にとっては生理的嫌悪感を催すものではあっても
決して憧れの対象となるような関係性ではない。
強いて言うのなら、
他者の他者性と向かい合い、
傷付き合い、それでも他者性との距離を
自分なりに掴んでいこうとするその姿勢こそが、
時に「倫理的」と呼ばれる態度なのではあるまいか。